ユーカリ

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秋に植えたユーカリの苗が少しずつ育っている。

何も手をかけていないのに、地面からすっと枝葉を伸ばし、足元には小さな雑草たちを従えて。
私の目には見えない速度で、でも着実に空に向かって生長している。

ユーカリを見ながら、死んでいった人たちのことを思う。
自然の刃で命を奪われた人のことを。
また、みずから命を絶った人のことも思う。

私のことを思う。
まだ枝葉を伸ばしたいという思いの側面には、命を終えることへの意識も張り付いている。

ユーカリはみずから命を終了できない。
人である私はちがう。
死を意識しながら枝葉を伸ばそうと欲求する私は、ユーカリとはちがう。
往生際の悪さという土壌で、矛盾と迷いの養分で生きる。
地の中であえぎながらもがきながら、この庭に根ざしたユーカリと共に、もうしばらくは新しい枝葉を伸ばしてゆきたいと願う。
他人の目には見えない速度であっても。

そしていつかどこかで...。
朽ち果てたときには、私の枝葉を、どこか深い森の奥に横たえてほしい、と願う。

まだ私の腰ほどの高さであるユーカリが、向かいのマンションの目隠しになるほどの背丈に伸びた頃には、色々なことが変化しているだろう。

今日を生きていれば。
あえぎながらもがきながら、枝葉を伸ばしていれば、遠い明日には答えが出ているだろう。
そこにまた新しい問いが生まれていたとしても。