美しいビジネスってなんだろう?

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House of Beautiful Business という世界的なコミュニティをご存知ですか?

「人が人らしく働くこと、美しいビジネスを展開すること」をテーマに掲げ、グローバルな対話の場を各地で開催するユニークな取り組みです。

先日、このコミュニティにおける日本で唯一の共催パートナーである京都のテクノロジー・スタートアップ、 mui Lab が開催するクローズドなイベントに参加してきました。

緊急事態があけて本格的に参加したリアルイベントであったことと、内容があまりに強烈で咀嚼するのに時間がかかりましたが、記録としてここに残しておきます。

イベントは10月30日土曜日の朝から始まった

午前中は、仏光寺の近くにある玄想庵での茶会から始まった。あいにく私は仕事で午後からの参加になったが、全国各地から集まった参加者が京都らしい出逢いの場を体験したようだ。

途中参加した私は、茶会の場から移動してきた参加者の高揚感を感じながら、夷川通りにある mui Lab のギャラリー兼オフィスに足を踏み入れた。

懐かしいリアルイベントの喧騒に少したじろぎつつ、木を多用した mui Lab のシンプルで温かい空間にほっとしながら靴を脱いでスリッパに履き替えた(この、靴を脱ぐのもリラックスできるんだよな)。すっかり見慣れた mui ボードが今日も優しい光の字を映し出して、私を迎えてくれる。

一期一会の時を過ごす「詩のワークショップ」

会場では昼からのプログラムを待つ間に「詩のワークショップ」が開かれ、私も2組目で参加。

テーブル中央に置かれた空っぽの封筒たちの表に好きな言葉を書くように言われる。それが詩のタイトルとなるらしい。続いて、他の人が書いた封筒を手に取り、そこに書かれた言葉=タイトルにちなんだ詩を手元の便箋に書いてください、とのこと。

私がもらった封筒には「時計じかけの地球」と書かれていた。え、いきなり詩を書くの?と戸惑いながらも、場の空気に押されてペンを手に取る。

時計じかけの地球。

タイトルを眺めるうち、息子の名前が「時(とき)」であること、今、地球は温暖化で待ったなしの状況であることが脳内をよぎり、森の中を歩く自分のビジュアルが浮かんだので、思い浮かぶままに言葉を書き連ねた(そういや私、昔は詩を書くのが好きで、詩の文学賞にも応募したことがあったっけな)。

同席した人たちの名も知らぬまま、突然、黙々と詩を綴り合う時間。誰一人として嫌がることもなく、躊躇しつつも創作の世界に入っていく。会場は賑やかなのに、詩を書く6人だけが岩穴に篭ったような静けさの中にいる。そんな不思議で心地の良い時間に浸っていた。

書き上がった詩は封筒の中に入れ、皆で交換して読み合った。それぞれが綴った言葉はとてもユニークで、新鮮で、温かくて、純粋に面白かった。

メッセージを映し出す媒体としての mui ボード

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mui ボード

そういや、mui Lab のプロダクトである「mui ボード」には、二十四節気の詩が届けられる仕組みがある。

詩は、自分と他者、自然、世界、宇宙をつなぐメッセージだ。デジタルが人と様々な事象をつなげる現代においては、mui ボードは詩を表現するうってつけの媒体だと思った(だから私はこの場で詩人にいざなわれて詩を書いたのかぁ)。

「音」を五感で聴くワークショップ

そうこうするうちに mui Lab の2Fで音楽イベントが始まった。

実験音楽、現代音楽で一つのジャンルを確立したといわれるジョン・ケージの楽曲を mui Lab の建物全館で演奏し、そのコンセプトや独特のワークについて演奏者の方々がトークするというユニークなワークショップだ。

ジョン・ケージは20世紀の音楽の潮流にものすごいインパクトを与えた作曲家で、京都賞を90年代に受賞していたそうだが全く知らなかった。

ja.wikipedia.org

今回、ジョン・ケージの音楽を日本に伝える活動を長らく繰り広げる演奏家の実演を目の当たりにして、おったまげた。

これは音楽なのか?

乾いた植物や鉄線など様々な物を介して、3人の奏者が黙々と音を生み出していく。即興ではなく楽譜のようなものがある。どちらかというと暗号が書かれたメモみたいだ。それとタイマー(!)を片手に緻密に、演奏は繰り広げられていく。一見、森の中でいい歳したおじさん達が拾ったもので遊んでいるかのようだ。

なんなんだ、これは?という思いに支配されていたのが序盤。徐々に様々な物から生まれる音のシャワーにのめり込んでいく自分がいた。

森の中で子どものように遊ぶおじさん達が、気づけば神の使者のように見えてきた。自然の神が派遣してきた使者が織りなす自然な音。それを感じる私たちは、五感に素直になればなるほど自由に自分の精神世界に入っていく。気づけば「音」が、この場にいる人たちの感性を解き放っていった。じっと目を閉じて瞑想するように過ごす人、床に座って暗闇を見据える人など、皆、思い思いに過ごしていた。

音の連なりに元々のルールなどなくても良い。作為的なルールを超えた本来のあるべき音を導き出す営みをジョン・ケージは愛した。

mui に込められた「無為」は、恣意的ではない在り方や営みを意味している。人のかたわらにさりげなく存在し、気づけば暮らしを豊かにするテクノロジーもまた、受け取る人が自由にその恩恵を享受する。

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音楽ワークショップ風景

「⾃然の営みも⼈間の社会も、結局はその偶然の出会いから成り⽴っているのであり、そこに作為や意図が介在しないとき最も美しい出来事となる。⾳楽も同じで、個⼈の⾃我や作為によらず、⾳をあるがままに出会わせること、それが⾳楽の⾃然であり、⾃然の⾳楽なのだ」

ジョン・ケージは、とある対談でこのように語っていたそうだ。

いかにプロダクトを作為的でないものとして世に送り出すか、mui Lab はスタートアップとして、果てしなくハードで本質的な問いに挑戦している。そして今回の音楽ワークショップで mui Lab で開催された意図に気付き、ジャンルや時代を超えたつながりの面白さを感じた。

「美しいビジネス」について語り合う

詩と音楽でかき乱された後、いよいよ楽しみにしていた「対話」の時間が始まった。テーマは、House of Beaautiful Business にちなんで「美しいビジネスを実践するにあたってのジレンマとブレイクスルー」。

あらかじめ割り振られた3人ひと組のグループでディスカッションをする。私のグループで印象に残ったのは、「人類に性差がなくなったとき、どのような世界になるのか」という話だった。これまでのビジネスはペルソナ設定のようにターゲットの種類を分けて売り先を定めていた。いま、多様性がどんどん広がる時代において、どんな社会になっていくのか、企業はどう多様性の社会に向き合っていくのか、そんなことを話すと時間が幾らあっても足りなく感じた。

グループディスカッション終了後、それぞれで話した内容を共有した。美しいビジネスに対する考え方は異なれど、現代の経済合理性を追求した量産型市場への違和感を感じ、より自然に、人が人らしく、未来に残せる地球の一員としてビジネスに従事したい、という思いは共通していたように感じた。

一日3組限定で占いを提供しているという、参加した占い士の想いと、カーム・テクノロジーの理念を掲げグローバルな成長を目指す mui Lab の姿勢は、やはりどこか共通していた。

山口周が『ビジネスの未来』(プレジデント社/2020)で引用したドイツの現代アーティスト、ボイスの「あらゆる人々はみずからの創造性によって社会の問題を解決し、幸福の形成に寄与するアーティストである」という言葉にも通じるものがある。

イベントはその後も夕食会まで続いたようだが、私は家族との時間があったので途中で帰宅した。しかしその後も頭の中に「美しいビジネスとはなんだろう」という問いがこびりつき、現在までずっとそのことが脳内に巣食っている。

『森のような経営』 とスタートアップとしての mui Lab

その後、ひょんなことで出会った本の内容が、私にヒントを与えてくれた。『森のような経営』(ワニ・プラス/2021)という本だ。

この本は、私の所属するコーチングの養成機関で長くプロコーチとしてリーダーを務め、現在は「森へ」という会社名で森を舞台にしたビジネスマンや個人向けのリトリートプログラムを提供する山田博さんと、山田さんが「森のような経営」をしていると評する経営者、山藤賢さんの対談本だ。

たまたま出会ったこの本には、今回の mui Lab での経験を深めるような内容が数多く記されていた。

「森のような経営」とは、現在主流の経済性最優先の経営ではなく、森のようにピラミッド構造もトップダウンの指示系統もない、調和を取りながら豊かに持続する経営であり、組織の文化風土は「気配」に表れる、というもの。また、ありのままであることが美しさにつながり、経営とはロジックと数字で社会を納得させた上で、経営者が「直感」「感性」「美しさ」で選び取り決めていくのが理想としている。

「感じることと、考えることのバランスを取りながら進んでいくことが重要」。そのありようを森と自然の営みに照らし合わせつつ展開している。

「気配」、という言葉が出てきたが、それは mui が提唱する「佇まい」にも通じているな、というふうに思った。

山田さんは現代人が一時的に森に身を置いて外界の情報を遮断し、自分以外を取り巻く自然と向き合うリトリートプログラムを提供している。

本の中で彼は、森に行かずとも森を体験する方法として、しばし自分に押し寄せる情報を遮断し、外界と接することのない無言の時間を作ることで都市にいながら森を感じることができる、と言っている。

それは、mui ボードにある「何でも取り込まない」コンセプトと似ている。mui ボードは、森を都市生活に持ち込む一つの手段でもあるのだな、なんてことも感じた。

ちなみに後で知った話で、山田さんは、mui Lab のスタッフのMさんと縁のある人だそうで、やはりここでも「つながっている」と実感した。

京都のスタートアップが挑む穏やかな革命

美しいビジネスと、一口で言っても空々しいものがある。実際、mui Lab のCEOである大木さんは、「血反吐を吐きながらビジネスをしている(苦笑)」とイベントで話していた。

あえてスタートアップという立ち位置を選んだ mui Lab が、自分たちらしいスタイルでプロダクトを作り、発信し、これまでにない価値を提供しながら現代の社会で緩やかに革命を起こしていこうとする姿は、まさに一つの美しいビジネスではないか、と思う。

House of Beautiful Business にちなんで開催された mui Lab でのイベントは、私に気づきや問いを与えてくれた。集まった多くのゲストも同様だっただろう。

mui Lab は決してはっきりとした答えを提示しない。

プラットフォーマーとして、あくまで一つの例としてシンプルな木で出来たデバイスを通し、作り手の言葉と、作り手の元に集う様々な人たちとの出会いと交流を通して、静かなムーブメントを起こそうとしている。

mui Lab がスタートアップであること、京都の企業であること、グローバルな活動を展開できる才能ある人たちで構成されていること、これらの要素の重なりは奇跡のようだ。

森のような京都のスタートアップ、mui Lab のこれからの成長を見守っていきたい。

 

1枚目と製品画像は mui Lab のサイトからお借りしました。

未来を創るスタートアップ、mui lab と学生をつなぐ 〜KRPのMOVE ON 所感 #2〜

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(写真は mui Lab サイトよりお借りしました)

人類は目に見えないほど少しずつ、けれども確実に進化し続けている。その進化を引っ張っているのが研究者やスタートアップだと、私は考えています。

私のような普通の人は、目先のことしか目に入りません。けれど一部の特別な人たちは、遠い未来であれ近い将来であれ、これからくるべき世界のありようを頭の中で描き、その世界にあるべきものを形にするため、今、この瞬間に行動をしています。それがビジョナリーであり、スタートアップだと思います。

一つ前の投稿に書いた京都リサーチパークでの学生 x 企業によるアイデアソンイベント「MOVE ON」では、毎回、スタートアップの創業者やエグゼクティブをゲストに招いて事業紹介のプレゼンテーションを行ってもらっています。

私はそのゲスト選びに関わっており、過去には、Quora のエバンジェリストであり、多拠点居住スタートアップの ADDress にもコミットしている江島健太郎さんや、新しい屋台の文化と都市デザインを手がける STAND 3.0 の中谷さんに登壇いただきました。

そして今回は、京都で生まれたスタートアップで、カーム・テクノロジーの概念を掲げて躍進している mui Lab のCEO 大木和典さんにお願いしました。

muilab.com

mui Lab を知ったとき、はじめは「木で出来た mui ボードという家具のようなデジタルガジェットを開発販売する会社」だと思ったのですが、その理念や誕生のバックグランドを知るうちに、「最先端のテクノロジーを人の暮らしに穏やかに溶け込ませるための新たなプラットフォームを創るスタートアップ」だという認識に変わりました。

学生に向けたプレゼンテーションで大木さんは、京都で家具の街と言われる夷川通にオフィスと展示スペースを構えていることや、無垢の木を使った mui ボードで出来ることを紹介しつつ、シリコンバレーで生まれた「カーム・テクノロジー」という概念と共に、日本ならではの「佇まい」「余白」といった文化的な感性を汲み入れた、mui 独特の世界観が根底にあることを強調しました。

カーム・テクノロジーについては、書籍で詳しく知ることができます。

カーム・テクノロジー 生活に溶け込む情報技術のデザイン

イベント初日のお昼で、まだ場が温まっていなかった時間帯だったのですが、大木さんのプレゼンによって Zoom のチャットが一気に盛り上がり、mui Lab の理念や世界観や取り組みが学生たちの琴線にも強く触れたことがわかりました。

実際、mui Lab は Lab という名がついているだけあり、アカデミックな土台がしっかりとある企業です。京都の大学や文化機関、自治体とのつながりも大切にしており、スタートアップとしては世界規模を目指しながらも、京都での「まちづくり」にも真摯に関わっている稀有な会社なので、大半が京都の大学に所属している学生にも、その先進性と共に魅力が伝わったのだと思います。

学生から「mui ボードに古材を使ったりしないんですか?」と質問を受けたとき、「木材の素材にこだわるというよりは、テクノロジーをどう人の生活に調和させるかが主題であるため、古材を使うことは考えていない」といった返事があったのも納得感がありました。

翌日、ある学生チームが発表したビジネスアイデアの中に「mui Lab と提携して mui ボードを設置する」という内容があり、思わず「やった!」と呟いた私でした。

mui Lab のカーム・テクノロジーがいかに伝統的な住居に調和しているかは、最近発表された京都の町家を再生、販売されている企業とのコラボの発表ページをご覧ください。

www.hachise.jp

また、最近ではエグゼクティブアドバイザーに元アップル副社長の前刀氏が就任したと発表がありました。これから、テクノロジー企業としてさらに加速を目指すとのことですから、楽しみです。

エグゼクティブ・アドバイザーに元アップル米国本社副社長 兼 日本法人代表 前刀 禎明氏が就任、muiプラットフォームの事業化を加速 | mui Lab

mui Lab では学生インターンを募集しているそうですので、最先端テクノロジーと暮らし、文化の融合に興味のある学生さんはご検討ください。

さて、次はどんなビジョナリーの魅力をお伝えしましょうか。これからも起業家と若者をつなぐ仕事を続けたいと思います。

共に成長しよう 〜京都リサーチパークの学生と企業による共創イベント所感

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(写真は京都リサーチパークさんからお借りしました)

 

9/4-5に開催された京都リサーチパークでのアイデアソンイベントにメンターとして参加しました。二日間の長丁場に全国各地の大学生が30名弱、参画企業からのメンターおよそ10名、主催者を含めて総勢約50名が参加しました。※完全オンラインです

www.krp.co.jp

このイベントは、単に学生がチームに分かれてビジネスアイデアを考案してプレゼンの質を競い合うイベントではなく、ビジネスの第一線で働く参画企業の社員がメンターとして各チームに加わり、コーチ的な役割を果たしながら共に2日間の長丁場を過ごすのが特徴です。

今回は6チームが参加し、村田機械、Lac(ラック)、大阪ガス都市開発という各分野におけるトップランナーの企業が参画しました。メンバーは設定された「2030年のスマートシティ」というテーマについて考え、最終日にそれぞれのアイデアが発表されました。

2日間というと短いようで長いです。初対面でZoom越しに知り合ったチームメンバーといきなり良いアイデアを思いつけるかというと全くそうではありません。お互いに牽制しながら緊張しながら少しずつ対話を重ねて課題の抽出、解決策、施策をプレゼンシートにまとめていきます。その作業は気の遠くなるようです。

私の役割は、全チームが走り切るためのサポートをすること。今回は苦戦していたチームにがっつり張り付いて、すれ違う意見を微調整しながら、合意形成からのアウトプットにつなげる手伝いをしました。

時に議論を蒸し返すような学生に対して、企業メンターが厳しく助言するようなシーンもありました。そこから前進へと転じた彼の姿勢も良かったです。本気でプロジェクトを完遂させるための気迫を感じた学生たちが最後は自分たちで乗り切った様子を画面越しに眺めていて胸が熱くなりました。

京都リサーチパークさんが学生と企業の共創イベントを開催したいと初めてアイデアを私に提示してくれた3年前は、なぜこのようなイベントを開催するのか、なぜ必要なのか理解できていませんでした。

このイベントは学生の成長だけでなく、イベントに関わる人間全てがそれぞれの役割を果たしながら成長するための場、多様な立場、人たちが共にプロジェクトに関わることで新しいビジネスのあり方を探求する場なのだと感じます。

コロナ禍で完全オンラインになりましたが、厳しい状況下でもテクノロジーを活用し、人間と人間が共に価値あるものを創り上げることができる。リアルで集まるほどの臨場感や体験的な満足度にはまだまだ及ばないけれど、こうしてパンデミックの中でも私たちは集い、生産的な活動をする。そんなレジリエンスを試される場でもあります。

そういう意味では、ZoomやGoogleをはじめとする、デジタルテクノロジーをサービスにして提供してくれる事業者にも感謝。知恵を絞ってこの場を作ってくれる主催者にも感謝。さらに、厳しい状況の中、単位がもらえるわけでもないのに参加した学生、本業を抱えながらも貴重な週末を割いて参加してくれた企業の皆さん、全てに感謝です。

今回、ウェブ会議の対話を可視化するサービス「Hylable」を提供する京大発スタートアップ、ハイラブルさんがテスト利用させてくださって、「これ面白い!」「ここはなんとかならないの?」など、感想を言い合ったり、サービス改善へのリクエストをしながらワイワイしながら過ごしたのも良かったです。

www.hylable.com

ちなみに、はてなが事業をスタートした創業の地が京都リサーチパークです。最近は、ビジネスパークとしてだけでなく、地域の人たちが集まる街の様相を呈してきたKRP。今年オープンした10号館のビルにあるフードサロンもオシャレで美味しいです。ぜひ皆さんも京都にお越しの際は、五条通りにある京都リサーチパークに寄ってみてください。

www.krp.co.jp

実家の近所に団地を借りたら故郷を再定義できたお話

突然ですが、春から京都の賃貸マンションとは別にもう一軒、家を借りました。大阪府堺市にある実家から徒歩10分、築50年近い団地です。

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団地の窓からの風景

実家のあるニュータウンの団地をセカンドハウスとして賃貸契約

4月の終わりに賃貸契約をして約1ヶ月、壁紙の貼り替えや家具の搬入などセットアップがほぼ完了し、セカンドハウスとして使い始めました。家賃は57㎡で5万円とちょっと。光熱費やネット代を入れて6万円/月がトータルの運用コストです。

セカンドハウスを実家の近所に借りた理由は、

  • コロナ禍で孤立し老化が進む親のサポートをするため
  • リモートワーク中心で今の家の滞在時間が増えたので別荘的な場所が欲しかったため
  • インテリアが好きなので好みの空間を実現したかったため

の3つです。これらの理由から思い切って部屋を借りたのですが、思いがけない副産物がありました。

それは、「自分にとっての故郷を再定義できた」というものすごく大きな効果です。

故郷を再定義するまでの道のり

両親は私が生まれ育った堺市に夫婦で住んでいます。85歳と77歳で、まだまだ日常生活は普通にできる元気な高齢者です。

しかし、コロナ禍で社会的な接触が減って孤立しがちな母親が精神的に参ってしまい、心療内科のお世話になるなど、心配なことが増えてきました。

これまでは、電話で励ましたり、LINEでやりとりすれば何とかなっていました。しかし孤立する母がどんどん弱っていくのを目の当たりにし、心配は絶えません。気付けば、毎週のように往復3時間かけて京都から実家へ帰り、親と過ごす時間が増えてきました。

しかし実家は私にとっては100%ルンルンと帰って穏やかに過ごせる空間ではありません。この感覚は、分かる人には分かるでしょう。

負の引力が強い場所、それは実家。

実家。大好きな人もいれば、戻るとなぜか憂鬱になる人もいるでしょう。かくいう私も、実家を訪ねると懐かしい反面、親と過ごす時間が重かったり、ふとした弾みに自分の若い頃を思い出したりして、苦い思いを抱いてきました。

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緑に包まれた実家のあるニュータウン

うちの実家は公団の高層住宅で、サラリーマンの父と専業主婦の母、4つ年上の姉との、世間一般的に見ればごく普通の家庭でした。

しかし、気に入らないことがあると家族に対して理不尽に怒る短気な父親と、その父親に気をつかってビクビクする弱気な母と私たち姉妹が織りなす不穏な空気が常に家庭に漂っていました。

今から思えば、高度経済成長期に猛烈に働き一家を養わねばならなかった父の日々のストレスたるや想像を絶するものだったと思います。また、社会経験もないまま専業主婦となり、二人の子どもを育てながらニュータウンのコミュニティで生きる母も大変だっったことでしょう。

中高生時代の不安定な時期だったことも相まって、ティーン時代は「早く大人になって実家を出たい」と願い続けていました。もちろん家族での楽しい思い出も山ほどありますが、私にとって故郷は去るべき場所であり、戻りたくない場所だったのです。

しかし長い年月が経過し、私も様々な経験をし、両親との関係も徐々に変化するなか、前述のような理由で実家の近くにセカンドハウスを借りたのでした。

「与えられた場所」から「自らの意思で選んだ新たな拠点」へ

元来、引っ越し好きな私ですので、地価の安いニュータウンで古い団地を借りたことで、自分の趣味であるインテリアに没頭できたことでウキウキの日々が始まりました。

けれどウキウキの原因がそれだけではなく、ある決定的な理由から、実家のある街に行くのが楽しくなったことに気づきました。

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リフォーム前の部屋

それは、親によって定められ与えられた環境であった実家ではなく、自らの意思で決め、自分が切り拓いた新たな拠点として故郷との関係を再構築できた、その事実が自分の心を弾ませるようになったのです。

賃貸サイトをくまなくチェックし、自分の好みに合う物件を探し出し、不動産会社に連絡し、内覧をしてあれこれ準備していくうちに自分の想いが変化するのを実感しました。

もう、故郷はかつて苦い思いをした場所としてではなく、京都と大阪の二拠点暮らしの場として、積極的に訪れたい街になりました。もともと自然が多く景観が美しい街なので、帰るたびにリラックスできる自分がいます。

この変化は、私だけでなく両親にとっても良い出来事だったようです。コロナ禍で外出もままならない母親の気晴らしの場にもなりつつあり、心療内科から処方されていた薬も飲まなくて済むようになりました。

実家の近所に団地を借りた。ただそれだけのといえばそうなのですが、故郷を再定義したということは、私にとってものすごい価値ある出来事になりました。

ま、それとは別で趣味のインテリアに没入できる遊び場ができて、本当に楽しいです。笑

また別の記事で、今回のインテリアについても紹介します。

 

本の読み方、生かし方

SNSが大好きな私ですが、会社を立ち上げてから意識的に本を読むようにしています。寝る前、休日、仕事が終わった後の夕方など。

といっても週に1冊読了できたらいいぐらいなので読書家に比べたら量は少ないです。けれど、会社を始めてまもなく3年経過しますが、読んだ本が生きてるなあと思う機会が増えてきました。

自分が本を読むときに、どういう本を読むべきかは、

- いますぐ仕事や生活に役立つ本(実用書)

- 世の中のことを知るための本(教養書)

の二通りをバランスよく読むように努めています。

で、蔵書が増えてくると、やっぱり自分の知識の引き出しができてきたなあと思うと共に、仕事や暮らしの折々で役に立ったと思うことも増えてきました。

つい先日、京都のコミュニティについて語るというトークイベントでスピーカーとして登壇しました。

20年間京都で暮らしビジネスに携わってきたものとしては話せることも多いので、そのまま何も準備せず登壇してもよかったです。が、今回は「コミュニティ」というテーマでしたので、今までに読んだ本の中から「コミュニティ」に関するものを引っ張り出してみました。それが以下の本たちです。

BEYOND SMART LIFE 好奇心が駆動する社会

BEYOND SMART LIFE 好奇心が駆動する社会

  • 作者:日立京大ラボ
  • 発売日: 2020/08/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
これからの幸福について―文化的幸福観のすすめ

これからの幸福について―文化的幸福観のすすめ

  • 作者:内田由紀子
  • 発売日: 2020/05/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

これらを改めて読み返すとともに、トークイベントで話せそうなことは、メモにして持っていきました。

あとは、ウェブ上でコミュニティについて書かれたページを読んで基礎知識をゲットすれば、自分なりに用意ができました。

イベントでは、「人とのつながり」がメイントピックになったので、特に上に挙げた中で、私がはてな後に広報として勤務した京都大学こころの未来研究センターで教授をしている内田由紀子さんの本にある研究内容について紹介したところ、けっこう盛り上がりました。

その時、チラ見していたメモの一部はこちら。

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メモには本当にさわりだけを書いています。引き出しの取っ手みたいなものです。一度読んで中身は覚えているのですが、私は致命的に記憶力が弱いので、こうして取っ手を用意するだけでも違うんですね。カンニングペーパー...。

実際、イベントで単に「自分がどう思うか」を話すよりも、よほど、良い話題を提供できたように思います。

イベントの登壇者として、この程度の浅い知識の持ち主がトークしていいのか、と思われる方もいると思います。

その点はイベントによって登壇者に求められる素養は変わってきます。

有識者を呼べばイベントが盛り上がるというものでもなく、ライトなイベントでは、その場のオーディエンスに相応しい話を会話の流れから読み取って提供して盛り上げる、という役割が登壇者に求められます。

自分の経験談 + テーマに関する知識 + 場の流れをコントロールする問いや発言 をうまく提供できると良い登壇者になれるように思います。 

知識は、人に教えることで自分の頭に定着する、といいますが、読んだ本についても、こうして人に伝えることで自分にも定着し、人の役にも立つので良いなと思います。

良い本を読んで、仕事や暮らしに役立たせたいです。おすすめの本があればいつでも教えてください。

あーもっと本棚が欲しいなー。