「ふたりの恋は終わったのね」で始まるサン・トワ・マミー。朝、デミオを走らせていたらラジオから聴こえてきた懐かしい歌。昔、父がよく口ずさんでいた越路吹雪。長年、彼女のマネージャーを務めていた岩谷時子という人が亡くなり、特集が組まれていた。いつもならラジオから流れる歌を気にかけることなどないのに、その声、その歌詞が胸に引っかかり、ベストアルバムをダウンロードした。
昼前、吉田を出て今出川通りから堀川上立売のUCHUまで買い物に行き、丸太町、烏丸を経て、はてなに向かうあいだ、聴き続けた。愛の讃歌、ろくでなし、ラストダンスは私に...etc.。越路吹雪のシャンソンは、すべて愛に生きる女の歌だった。情感あふれる歌と歌詞には、純粋な愛への希求と切なさと甘さが凝縮されていた。
男など命を燃やし人生を捧げるに値しないもの。でも、理屈や理性を超えた感覚が女を女たらしめる。一瞬の煌めきでもいい、幻想でもいい。愛に生きられたなら、これぞ女としての幸せ。ロマンティシズム。夜、サン・トワ・マミーを口ずさんで歩いたら、雨あがりの川端通りが巴里の街路になった。