先週の金曜日、ゆきちゃんに誘われて吉本祇園花月に落語を観に行った。きもので行くと無料になるというので、雨のなか二人で木綿を着て市バスに乗って行った。
開演前におそばを食べようと、会館の脇にあるご飯屋さんに入った。二人とも三色蕎麦なるものを頼んだけど、なかなか出てこない。「遅いわねえ、今ごろ大根とヤマイモひっこぬいてるんじゃない?」「きっとナメコ栽培してるんよ」とか言いたい放題言ってたら開演15分前にようやく出てきた。そこからは黙々と食べる、すする。ズズズーと二人で食べてたら、その沈黙が面白かったのか、ゆきちゃんがヒイヒイ笑い出して、開演まであと10分だっちゅうのに笑いが止まらなくなった。むろん私にも伝染して二人でヒイヒイ言いながらも「あかんラストスパートやで」と励まし合って、なんとか完食。あたふたと会場に行ったら、係員が迎えてくれた。二人して既に笑いスイッチが入ってしまっているので、これから何があっても笑える自信ある。
今日の主役の月亭方正は、長年タレント活動をしていた人が40歳すぎてから入門したという異色の落語家。明るくて、関西芸人らしいノリで、安心して笑わせてもらった。演目は「手水回し」と「紙入れ」。ゲストは東京からやってきた柳家喬太郎。「初天神」に続くふたつめの自作落語「ハンバーグができるまで」が味わい深くて、江戸っ子弁がたまらなかった。終わったあとバスに揺られながら、
「ゆきちゃん、わたし、落語は上方より東京やわ。江戸っ子弁にめっぽう弱いんよ。オトコの言葉は江戸っ子弁にかぎるね」
「まあ、れいこちゃん。やっぱり人はないものを求めるのね。私は、上方の男性と出会ったことがないのよー」
ゆきちゃんのご主人のリノさんは、バリバリのお江戸出身だ。会うと、うっとりするよな江戸っ子弁を話してくれるので、つい長話してしまう。
話し言葉だけでなく、笑わせ方もやっぱり上方と江戸では違うんだろう。喬太郎のキャリアがそう感じさせたのかもしれないが、笑いのポイントが自分の肌になじんだものではないのがかえって新鮮だった。
それにしても会場はきものの割合が高かった。妙齢の男性の羽織姿が粋だった。しかしもはやあんな恰好をする男性は、まともな堅気の人間には見えない。かつて京都を盛り上げた旦那衆は今どれぐらい残存しているんだろう。祇園花月で落語会を開催するのは滅多にないそうなので、吉本は相当がんばってその筋の人たちを集めたとみえる。きものなら無料、ということで招集された私たちにも吉本の期待がかかっていそうだ。マーケティング。落語が京都にどれだけ定着するか、見ものだし、応援していきたいな、と思う。なんせ生で見る落語って、ほんまに面白いんだから。次回は11/22にあるそうです。