年度末

 

 今日は年度末。大学の学術センターで仕事をするようになって初めて迎える年度末。想像以上に年度末は節目なようだ。つまり大晦日みたいなもの。週明けの4月1日が、元旦のようなもの。学生にとっては新学期の始まりの日がそれにあたるかもしれない。

 今日は同じオフィスで働くFさんと、事務を仕切っているKさんがセンターを去る日。短い期間だったけど、Fさんは同じ部屋で共に過ごした仲で、Kさんは事務のトップ的な人なので何かとお世話になった。Fさんは大学を出てセンターでアルバイトをしながら航空管制官受験の勉強をし、めでたく難関を突破して今年、晴れて国家公務員に。Kさんは大学職員の宿命で3年のセンター任期を経て次は奈良にある文化施設へと異動。次々と勤務地が変わる職員の仕事は大変だ。

 何か彼らにはなむけができないものかと考えて、Fさんにはお昼ご飯をご馳走した。店に連れて行くだけだとつまらないから、寿司屋に頼んで彼女の好きなサーモンをてんこもりにした海鮮ちらし寿司を用意。Fさんは目を輝かせてモリモリ食べてくれた。 

 お寿司だけではつまらないので、お茶もふるまうことにした。朝のうちに御所の東、寺町今出川のかぎや延弘に寄って、生菓子を10ヶ仕入れた。抹茶、茶せん、茶碗、懐紙、楊枝なども持参。ランチの後に、おもむろに茶碗を出して薄茶を点て始めたら、Fさんが大喜びし始めた。KさんやFさんの同僚の女の子もわらわらとやってきた。懐紙の上に生菓子をのせて、目の前で薄茶をシャカシャカと点ててふるまったら、皆の背筋が少し伸びた。「どうやってのむんですか」「ふつうに好きなようにどうぞ」「お茶碗はまわすんでしたっけ」「いちおうまわしますけど別にいいですよ」などとワイワイ。ふだんは無口で表情があまり出ないKさんもニヤニヤして美味しそうにお茶を呑んでくれた。さらに隠し持って(?)いたデジカメを取り出し「皆で写真をとりませんか」と意外な提案。その場に居合わせた5名で仲良く記念撮影をして解散とあいなり、私の計画は成功裏に終了した。

 初めて他人にお茶をふるまった記念すべき日...。裏千家の冊子やらによく登場する「一碗からピースフルネスを」というコンセプトを実感した瞬間。私も門下のひとりとして立派に活動を始めたものじゃわい、と少し得意に。

 これまでは、別れは単なる別れで、ただ見送るだけだった。しかし、さよならは新しい関係のはじまり。こうして出逢った縁がまた新しい縁を呼ぶかもしれない。一期一会を大事にすることで、豊かな関係の広がりが生まれるのではないか、と思うようになった昨今。Fさん、Kさんともまた何かのご縁でつながるかもしれない。

 ということで、心と時間と行為で、FさんとKさんに私なりの歓送の気持を伝え、やり遂げた感に浸っている深夜2時。今ごろセンターのある鴨川ぞいの桜の花はミシミシ開花していることだろう。