小さな旅を重ねるように暮らしたい

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生きることは、一瞬の出逢いと別れ(分かれ)を重ねること。

人だけではない。風景や、季節や、言葉や、想いなど、
さまざまなものと出逢って、そして別れる(分かれる)。
あとには「感じたこと」だけが残る。

出逢いと別れ(分かれ)のない人生など、送りたくない。
何かを感じない人生など、送りたくない。

暮らしという、小さな旅を繰り返しながら、
たくさんの何かを感じて、感じて、感じて、
私という「何者か」を作り上げてゆきたい。

小さな男の子は、その目撃者であり、同伴者である。
彼が「何者か」になる過程の目撃者でかつ同伴者は、私である。

いっしょに旅を繰り返していこう。
かならずおとずれるであろう、別れの(分かれの)ときまで。

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週末。石川に住む親友が、二人の子供をつれてやってきた。
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出町柳に住んでいるなら、鴨川へ連れて行かない手はない。
あっというまに意気投合した子供たち。
川べりを駈ける、駈ける。

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小学生のおにいちゃんに感化され、初めて亀石を渡りきった息子。
兄弟はいなくても、身近なお手本はたくさんいる。
私と息子は、社会というコミュニティに育てられている。

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達成感に包まれた表情をしている。
また少し、私の手から離れるときが近付いた。

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日曜日は、雨のなか大山崎山荘美術館へ出かけた。
息を切らせて坂をのぼってたどりついた山荘のバルコニーからの風景。
鮮やかすぎる新緑に、目がくらみそうだった。

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一瞬だけ雨があがったそのすきに、庭園を散策。
退屈だった館内での厳粛な空気から解放されて、こどもが走る。

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甘えたで、外出するときは私の手を数秒も離そうとしないのに、
庭園の美しさと開放感に突き動かされたのか、姿が見えなくなるほど
遠く離れたところまで駆け巡る。

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童話に出てくるような幻想的な庭にたたずむ巨大なウサギ。
子供にだけは、その声が聞こえていそうだ。

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一本だけ、満開の八重桜に遭遇。
うつろう美がこぼれ落ちそうだ。
何を思って眺めていたの?

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日曜日は、冷たい雨がそぼふっていたので、出かけるのをやめようかと躊躇していた。
けれども、なぜか無性にこの場所に来たくなって、後先を考えずに息子の手をとって家を出た。
そして出逢えた美しい風景。見知らぬ土地で交わす息子との会話も新鮮で楽しく、来てよかったと思えた。
これからも、どんな小さなことでも、自分の衝動や直感には、できるかぎり従っていこう。
小さな旅を楽しみ続けるためにも。