幸せはいつもちょっと先にある

幸せはいつもちょっと先にある―期待と妄想の心理学

たとえばミーティングで今後のプランについて話し合ったとき、非常に面白くて将来うまくいきそうな案が出てきて、場が一気に盛り上がるときってありますよね。
色んな人からその案に対するさらなる案がとびだしてワクワク感が高まったときの雰囲気のよさ!
「これは絶対にうまくいく」「よしこの後すぐに作業を始めよう」などと思って意気揚々とミーティングの席を立ちます。
しかし実際に席にもどって普段の生活に戻ってみると、「あのときのミーティング、なんであんなに盛り上がったんだろう」といった尻つぼみな状況になって、たいしたことにならなかったこと、ありませんか?
その理由は、人は、実際に行動するよりも、出来事を想像、妄想しているときのほうが「楽しい」し、未来の新しいことは「うまくいく」と考えがちだからだそうです。

この本は、人間が自分の未来を想像したり、未来の自分の姿や出来事がどうなるかを予測するしくみと精度を、あらゆる実験結果を引き合いに出しながら解説した「期待と妄想の心理学」です。
人は、未来を空想するとき、挫折した自分や失敗した自分より、やりとげた自分や成功した自分を思い浮かべる傾向があったり、逆に大きな病気になったり過酷な出来事に遭遇したときには、実際以上の大きさの苦しみや悲しみを味わうと見積もるそうです。この本では、それらの例を膨大な研究事例と毒とユーモアを含んだ考察で紹介しています。
いかに人が未来を誤って予測しやすいか、その弱点の理由はなぜか、ということについて本の大半が占められているおかげで、自己啓発書のように「だからどうすればよいか」という部分は、ごくごくわずかです。なので、少し肩すかしな点はありましたが、「これだけ事例を教えてやったのだから、あとは自分で結論を導きだしなさい」ということなのかもしれません。
私がこの本から学んだことは、「自分が想像する未来はまったくあてにならない」ということと、「他人と自分の思考パターンと行動パターンは、自分が思っているほど違わない」こと、そして「自分がこれからしようとしていることがどういう方向に進むかは、同じようなことをすでに経験した人を探してその人から経験談を聞くことである程度予測がつく」というものでした。
つまり自分の未来について、余計な想像や妄想をしすぎないのが良い、ということですね。とりわけ、不安や心配をしても仕方がないし、過度に楽観的になるのもよくない、ということだと思います。
そして、ちょっと先の幸せを得たかったら、まず「なりたい自分」をイメージし、それにあてはまる身近な先人を探し出し、その人からの経験談や知恵を素直に頂戴し吸収し、それをお手本にして自分なりに行動していくことなのでしょう。
自分を特別視することは悪くないけど、自分はほとんどフツーなんだと認識して、他者より学ぶことは大事なんですね!