川の上を飛ぶユリカモメの大群に出会った。
ものすごいスピードで北に飛来したかと思うと、一斉にきびすをかえして南へと向かう。
今度は高度を一気に上げて北東へ。そしてスピードを落とし、橋の下にわらわらと停まる。
いったい何をしていたのか。
何のために飛んだのか。集団で。一羽も外れることなく。
鳥になりたいと思ったことはない。
飛びたい、という気持ちを持ったこともない。
けれど、あのユリカモメになってみたい。
ただ一心不乱に北へ南へと群れの一員となって飛翔したい。
翼を懸命に上下させながら、ひたすらに大群の構成部員となって空を疾走したい。
心はなくとも。考えずとも。目的を知らずとも。
ただ厳寒の空を切って、時空を進みたい。
一羽のユリカモメになって。