誕生日を迎えたら、旧年の疲れが溢れ出たように心身から力が抜けてしまった。ブログに言葉を記すこともできなくなり、暮らしを営むだけで精一杯になった。まだ疲れている。
9月の最初の週は、秋というよりも夏の終わりというほうがふさわしい。秋を迎えて晴れ晴れというよりは、夏が去ることへの淋しさのほうが勝っている気がする。だから誕生日はいつも複雑な心持ちで迎えている。
ブータンに行っていた准教授のKさんがハーブティをお土産にくれた。黄色い箱に入ったレモングラスのお茶。パッケージを見ると「ブータンの山奥で丁寧に摘んだ葉を用いたオーガニックティーです。デトックス効果があり、心身を癒します」と言う風に書いてある。まるで今の私のためにあるようなお茶だ。それを飲みながら書いている。こうしてブログが書けるようになっただけでもお茶の効果があるのかもしれない。
昨夜、保育園のパーティがあって、いつもの仲間と杯を酌み交わした。二次会は東大路丸太町のメキシカン、El latinoの穴ぐらのような地下部屋。店主のおじさんがニコニコの笑顔で迎えてくれた。「ちょっと思ったより来るの早かったね」と慌てて、ビールケースや生樽を廊下に運んで、場所を整えてくれた。
みんなのお喋りを眺めながら、ぼおっとしていたら、いづみちゃんが赤ワインを持って隣にやってきた。この店はいづみちゃんの馴染みの店だ。さっきの店主との出逢いをたずねたら、
「この店はな、すごくお世話になったパーカッショニストさんが紹介してくれてん。その人が本当にいい人で、色んな人同士をつなげてくれて、気付いたらこの店には彼が大事にしていた人ばかりが集まっててん。
でもな、ミュージシャンて不摂生な人が多いやん?50代で病気になって亡くなってしまってん。だからこの店に来るとその人を思い出すからしばらく来れなかったけど、やっと来れるようになったなあ。
だから最近、思うねん。ベテランのミュージシャンはギャラが高いとか、そういうのあるけど、いつ一緒にやれなくなるか分からへんやん?だから血糖値の高い人からどんどん声かけていこうかと思ってるねん(笑)」
魂で唄う、って言い方がぴったりのいづみちゃんこと、こじまいづみは、いつも人のことを考えている。そして、その思いの温度が高い。いづみちゃんのところには、ハートが熱い人が集まる。だからいづみちゃんもまた熱くなる。そしてそれが彼女の歌につながる。
「死んだときにさ、人から何て言ってもらえるか、それだけやんね。パーカッショニストさんはそんな風に語ってもらえて幸せやね」
「ほんまやで!うちのおじさんな、めっちゃ食通な人やったんやけど、病気で死ぬ30分前に家族から ”おとうちゃん、何食べたい?”と聞かれて、"お好み焼き。豚玉”ってゆうて、ほんまに豚玉をぺろっと一枚食べきって、30分後に亡くなったんやで。お通夜でもみんなその話で盛り上がって、法事のときにはみんなで豚玉を食べてん(笑)」
なんて良いエピソードだろう。よく死ぬことはよく生きることだ、という言葉を思い出したよ。
「いつ死ぬかなんて分からへん。今晩死ぬかもしれへんもんな」と、いづみちゃん。
「そうやね、死んだあとが人間の見せ所やね」と、私。
もしいづみちゃんが私よりも早く死んだら、なんぼでも彼女のことを語れる自信がある。あえてひとことでいい表すなら「音楽と共に生きたソウルシンガー」やね。格好いい。
我が身を思うと、せいぜい「好き勝手に生きた」ぐらいかな。それでもきっと私の大切な仲間は私のことをそれなりの言葉で表現してくれるだろう。そのとき、何を言ってもらえるかは、私には分からない。ただ、今は、人のなかで、人と共に、うつろいゆく季節を泳ぎ続けるしかない。
日曜日。朝から雨。午後からは大学のセミナーだ。「支える人の学びの場。こころ塾」。なかなか素敵なタイトルだ。2週間前の第一回は大成功だった。とても良かった。あれからまだ2週間しか経っていないんだ。今日もうまくいきますように。帰ったら、いづみちゃんがイチオシだという映画『ブルースブラザース』を観よう。
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