「原発と潜在認知」

9月5日から7日にかけての3日間、私の務めるセンターで「こころの科学集中セミナー 原発と潜在認知」という短期集中型の講義が行なわれています。

カリフォルニア工科大学の教授で、センターの特任教授でもある下條信輔さんが、自身の専門である認知心理学を通して原発をめぐる人間の心理について「潜在認知のバイアスと限界」をキーワードに考察し、ゲストと共に討論する試みです。

初日が終わりましたが、2時間余りの講義がものすごく濃い内容で、終わった後もどこか神経がピリピリと引きつったような感覚をおぼえました。

心理学の定説によれば、人間は本能的に身を守るためリスクを伴うと思われる行動を避けるといいます。一方で、直近で得られる利益にとらわれ、遠い将来にもたらされるかもしれない損害に対しては頓着が薄くなるそうです。

前者がそうであれば、なぜ人間はリスクが大きい原発にコミットしたのかと疑問を抱き、後者がそうであれば、なるほど目先の利益優先で長期的な問題点からは目をそむけたのかと納得します。

人間の「叡智を結集」して作ったエネルギー装置、原発に対して、なぜその叡智をリスク管理や事故対応に対しても十分に注ぎ込めずに結果的に被害をもたらしてしまったのか、人の「ものの考え方」=思考パターンや「知らず知らずの」=無意識の行動が、どう原発事故に影響したのか、セミナーでは下條先生の深く鋭い考察が様々な実験結果やデータと共に展開していきます。

原発については様々な考え方がありますが、このセミナーは原発の賛否を問うものではありません。「ヒトの認知能力にはもとより大きなバイアスがあり、限界もある。 知覚、注意、記憶、情動、意思決定。そうした、認知機能のあらゆる側面にわたるヒトの本性は、そもそもこのような巨大システムの危機管理と相容れるのか否か」という心理学の側面から原発との向き合い方を考えることで、新しい視点を与えてくれるものだと思っています。

残り2日間で、どんなお話が聞けるのか、こころを研ぎ澄まして参加したいと思っています。