クリスマスとはてなブログと私

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 もうすぐクリスマスですね。
 3才になる息子はプロテスタント系のキリスト教会が運営する保育園に通っているので、最近は毎週、クリスマスを迎え祝うためのアドヴェント礼拝に参加し、賛美歌を歌っています。
 保育園の大きなホールには、クリスマスボードが設置され、日を追うごとに園児たちが折り紙で作ったお星様やサンタの飾り付けが増えていきます。こうして、祈りながら、飾りながら、来たるクリスマスに向けて皆で準備をおこなうことで、クリスマスを祝うための気持ちを高めている園児たちです。
 はてなでも総務スタッフによって11月下旬にクリスマスツリーが飾られました。おそらくクリスマスの日のまかないには、イベントを盛り上げるのが上手なシェフのさっこによって、素敵に演出されたランチが出てくることでしょう。
 とはいえこれまでのはてなでのクリスマスといえば、その程度でした。個人的にもせいぜいイヴにケーキを食べてプレゼントを買いに走る程度。前述した教会の子供たちが体験するような、クリスマスを迎えるための作業やプロセスそのものを楽しむことは、そうそうありません。私を含め、多くの日本人がそうではないでしょうか。

 そんななか、エンジニアのid:antipopが、「Hatena::Staff Advent Calendar 2011」( http://atnd.org/events/22740 )というイベントを企画し、クリスマスまでのプロセス体験に縁がなかった私に新しい機会を与えてくれました。
 古くからあるアドヴェントカレンダーにならって、12/1からクリスマスのあいだ、共通のテーマで有志がひとりずつブログを更新していくユニークなウェブでのあそび。最近では色んなグループによってアドヴェントカレンダーが作られているとのこと。全く知りませんでした。
 素敵な機会を与えてくれたid:antipopに感謝します。

 Hatena::Staff Advent Calendar 2011のルールでは、書き手ははてなについて書くことになっています。
 創業時からはてなにいる私ですので、「こんなことがあった」という昔話を書くのは簡単ですが、その辺のお話はネット上の様々なところに転がっていますので、あえて書きません。新しいスタッフの方は、社内グループにある「はてな黒歴史」という知る人ぞ知るページをめくってみると、はてな社内の歴史がかいま見れて面白いのではないでしょうか。
 そんなわけで今日は、クリスマスとはてなブログと私、というテーマで書いてみます。

 ところで、クリスマスの定義をご存知ですか?
 Wikipediaによると、「イエス・キリストの降誕(誕生)を祝うキリスト教の記念日・祭日である。「神の子が人となって生まれて来た事」を祝うことが本質である」と書かれています。
 ただ、キリストの誕生日が12/25であると特定されているわけではなく、あくまでクリスマスはキリストが世に降りて来たことを記念するものとみなしている、と書かれています。ですので、「誕生日を祝う」のが目的ではなく、「誕生したことを祝う」のが大事なのです。
 これはとても大切なポイントで、私たちも往々にして様々なシーンにおいて目的をはきちがえたり、当初の主旨などには目もくれず、安易な風潮に踊らされ、右往左往するきらいがあります。
 例えばクリスマスだからイヴに誰かとディナーに行かないといけないとか、彼女がいないからクリスマスは憂鬱だとか...。よく考えると非常に愚かなことですね。意味が分からずに賛美歌を歌っている保育園児のほうが、まだ可愛いです。
 話がそれましたが、つまり、クリスマスはキリストの降誕を祝う行事です。
 そして、神の子ではなく、単なる人の子である私たちも誕生したことを祝います。「生まれてきたこと」は、とても良いことで祝うべきことであり、毎年、誕生日にはそれを記念して祝うわけです。

 人は、キリストや人だけではなく、様々なものの誕生も祝います。
 今までこの世になかったものが世に現れたときには、多くのケースでそれを祝います。会社やウェブサービスが生まれた場合にも祝います。
 最近は、はてなからポコポコと新しいサービスや機能が出てきています。何度目かのベビーブームのようです。祝賀ムード、というほどではありませんが、最近のはてな社内は活気があります。

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 そんななか、私が最もうれしく感じているのは、新しいはてなブログの誕生です。

 社内の方針として、新たなブログの開発が決まったとき、激しく戸惑いました。今のブログとどうやって折り合いをつけていくのだろう。不安に思いながらベータ版のリリースを迎えました。
 「れいこんもブログを書いて」と夫やディレクターから言われましたが、しばらくは本腰を入れて書く気になれませんでした。古いブログへの執着があったからです。
 しかし一度新しいブログを書き始めると、なんと気持ちの良いことかと目がさめる思いがしました。
 長く同じブログを書き続けていたことで、勝手に自分が作り込んで引きずってしまっていた自分のイメージが重荷になっていたようです。それが、新しいブログに引っ越すことで、「今現在の自分」というスタンスだけで文章が書ける。これはすばらしいリフレッシュ法だ、と感じました。
 海外ドラマにおいて何度もシーズンが切り替わるように、アイドルグループのチーム編成がしばしば変わるように、ブログにも刷新が必要だったんだ、ということを実感しました。
 さらに良い事には、はてなブログでは気軽にポコポコと新しいブログが作れるうえに、共通した管理画面で簡単に編集や設定がおこなえます。
 さっそく、「しなもん日記」を新たに作って再開しました。
 2008年に出産してからは育児に必死でしなもんのことをかまってやれず、ブログ更新もストップしていました。さっそく、ブログの再開を待ってくれていた往年のしなもんファンや、最近はてなを使い始めて、しなもんのことを知らなかった人たちが読者になってくださっています。
 id:kiyoheroが、昨日登場した新サービスの「はてなまとめ(仮)」で「しなもんまとめ」を作って新ブログを紹介してくれたことも大きいです。田原俊彦由紀さおりのように、しなもんもまた不遇の時代を経たのち、新たなステージで活躍できそうな予感がします。それには長生きが必要ですが...。
 ブログで自分をコンテンツ化することの意義的なことid:antipopが書いていましたが、私やしなもんは、まさにブログでみずからをコンテンツにしようと努めることで、活路を見出してきました。
 ブログがあったから、ここまでやってこれた、といっても過言ではありません。

 2001年頃のこと。はてなが生まれる少し前あたり、私は「いつかヨーロッパのバールのようなカフェをオープンさせたい」という夢を持っていました。じっさい、左京区の小さなブラジル系のバールで修行をしていました。
 しかし、ネットで起業したい、自分のアイデアを世に送り出したいという夫の意気込みに心を動かされ、みずから夫に志願してウェブサービスのスタートを手伝い始めました。
 しかし、プログラミングはおろかエクセルも一般事務も満足にできない私は、ただの足手まといでしかありませんでした。
 ぼつぼつ増え始めたユーザーさんからの問い合わせに必死で対応し、税理士さんの教えのもと経理事務に奮闘し、昼夜を問わず人力検索はてなで回答し、夜中に鳴り響くサーバートラブルの警報アラームで目をさまして夫を叩き起こすなど、バラエティに富んだ「雑事」をこなす毎日。
 自分のスペシャリティが見いだせない、作れない苦悩のなか、転機がおとずれたのは2003年のはてなダイアリーベータテストの開始でした。

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 私の日記歴は小学4年にさかのぼります。厳しすぎる女教師として皆がおそれていた池田という担任の女性が、一学期の初日に生徒全員に課したのが「日記をつけること」でした。以来、365日、与えられたノートに日記を書く日々が始まりました。提出を怠るとものすごい勢いで怒られるため、毎日必死で何らかの出来事や考えたことを文章で綴り、書き続けました。
 最初は苦痛だった作業ですが、自然と書く喜びをおぼえました。いや、書く喜びというよりは「書けば先生からもらえるフィードバック」が楽しみになってきたのです。
 どんなフィードバックかというと、朝に日記を提出すると、池田先生は日記の余白に細かな感想コメントを添えて戻してくれるうえ、文章上で良かったところに赤ペンで二重丸や花丸をつけて返してくれました。まるでブログのコメント欄と引用付きはてなスターのようです。
 さらに先生のお眼鏡にかなった文章は、学級新聞や国語の授業の資料に掲載され、皆の前で披露されました。こうして、頑張って書いたことで得られるフィードバックが嬉しくて、私は学級の誰よりも熱心に日記を書き続けました。
 さらにその日記にとどまらず、高校を卒業するまでのあいだ、友人との交換日記、手紙のやりとりなど、常に「読み手のある文章」「フィードバックのある文章」を書き続けました。
 はてなでの悶々とした日々のなかで、業界でにわかにブログサービスが脚光を浴び始め、2003年にはてなダイアリーの開発が本格化したとき、私は「きた!きた!」と小躍りしたい気持ちになりました。
 はてなダイアリーがサービス化された後は、はてなでの日々を綴ることで、ユーザーさんや業界関係者とのつながりが生まれました。しなもんの日々を写真と共に紹介することで、しなもんファンが徐々に増え、はてなのサイトでもマスコット犬としてデザイナーに写真素材を使ってもらえるようになりました。
 出産してからは、育児ブログを付けることで、遠く離れた父母に孫の様子を伝えて喜ばれるようになりました。女性として、母としての悩みを赤裸々に綴るエントリーでは、友人だけでなく見知らぬ方から共感のメールをもらうようになりました。
 以来、ブログは私の人生と共にあります。

 ブログによって、私は様々なものを人に与え、それよりも多くのものを人から得ています。
 しばらく停滞していたブログ生活でしたが、はてなブログが生まれたことにより、また新たにブログの魅力を再確認でき、新しい出発ができました。

 キリスト教徒は、神の子が人となって世に降りてきた記念として、クリスマスを祝います。
 クリスマスに関わらず、人々はこの世で様々な事柄を記念し祝うことで、自分たちに与えられた境遇に感謝します。
 私もまた、この世にブログがあることを心から感謝し、これからもブログと共に生きていきます。

「Hatena::Staff Advent Calendar 2011」
http://atnd.org/events/22740

しなもん日記 - しなもんトナカイ」
http://cinnamon.hatenablog.com/entry/2011/12/06/154754